今日も雑談の部屋へようこそ!
スポーツを見ていると、ほぼ必ず登場するものがあります。
ゴールを決めて「よっしゃー!」
ホームランを打って「やった!」
競馬で自分の買った馬が1着になって「来たー!」
そんなとき、思わず拳を握って腕を突き上げる。
そう、
ガッツポーズです。
ところで皆さん、「ガッツポーズ」という名前の由来をご存じでしょうか?
有名なのが、
「ガッツ石松さんがやったから、ガッツポーズと呼ばれるようになった」
という話。
私も長いこと、そういうものだと思っていました。
ところが調べてみると……。
どうやら話は、そんなに単純ではないようなんです。
今日は「ガッツポーズは本当にガッツ石松が元祖なのか?」について雑談してみましょう。
まずは、あまりにも有名な「ガッツ石松説」
時代は1974年(昭和49年)4月11日。
東京の日大講堂で、WBC世界ライト級タイトルマッチが行われました。
挑戦者はガッツ石松さん。
王者はメキシコのロドルフォ・ゴンザレス。
当時、ガッツ石松さんは世界王座への挑戦に失敗した経験もあり、決して圧倒的有利と見られていたわけではありませんでした。
ところが試合は――
ガッツ石松さんが8ラウンドKO勝ち!
見事、世界チャンピオンになったのです。
その瞬間、ガッツ石松さんは喜びを爆発させ、両手を高く掲げました。
この姿を新聞などが「ガッツポーズ」と表現。
テレビや新聞を通して、その言葉が一気に日本中へ広まったとされています。
実際、現在でも4月11日は「ガッツポーズの日」として知られています。
なるほど。
ここまで聞けば、
「やっぱりガッツ石松が元祖じゃないか!」
と思いますよね。
ところがです。
なんと1972年に「ガッツポーズ」という言葉があった!
ガッツ石松さんが世界チャンピオンになったのは1974年。
しかし、それより前の1972年に、「ガッツポーズ」という言葉が使われていた記録が残っています。
その舞台は――
ボウリング。
当時、日本は空前のボウリングブームでした。
中山律子さんをはじめとするスター選手が活躍し、テレビでもボウリング番組が放送され、全国各地にボウリング場ができました。
そんな時代に学習研究社から発行されていたのが、
『週刊ガッツボウル』
というボウリング雑誌。
1972年11月30日号には、
「長身・杉本勝子の“ガッツポーズ”」
という写真のキャプションが確認されています。
さらに同誌では、プロボウラーたちのガッツポーズを紹介する企画も掲載されていました。
つまり――
ガッツ石松さんが世界王者になる約1年半前から「ガッツポーズ」という言葉は存在していた。
これはかなり決定的ですよね。
じゃあ「元祖」はボウリングなの?
ここは少し慎重に考えたほうがよさそうです。
「ガッツポーズ」という言葉が1972年のボウリング雑誌で使われていたことは確認できます。
しかし、
「その雑誌がガッツポーズという言葉を初めて発明した」
とまで断定できるかというと、話は別です。
それ以前からボウリング関係者の間で使われていて、それを雑誌が掲載した可能性もあります。
さらに、「拳を握って喜ぶ」という動作そのものなら、当然もっと昔から世界中にありました。
人間、勝ったら昔から拳を握ります(笑)。
ですから、
「この人が人類で初めてガッツポーズをした!」
という話ではないんですね。
問題は、あの動作を日本で**「ガッツポーズ」と呼ぶようになったのはいつなのか**ということです。
そもそも「ガッツ」って何?
ここで英語の話を少し。
「guts」という英語があります。
もともとは「内臓」「はらわた」といった意味ですが、そこから転じて、
勇気、度胸、根性
という意味でも使われます。
日本でも、
「もっとガッツを出せ!」
「ガッツのある選手だ」
なんて言いますよね。
そこに「pose(ポーズ)」をくっつけたのが、
guts + pose = ガッツポーズ
というわけです。
ただし、「ガッツポーズ」は日本で生まれた和製英語です。
英語圏で日本と同じ意味で「guts pose」と言っても、普通は通じません。
これも面白いところですね。
では、なぜガッツ石松説がこれほど有名になったのか?
ここが今回の一番面白いところです。
1972年にボウリング雑誌で「ガッツポーズ」という言葉が使われていても、それを知っていたのは主にボウリングファンでしょう。
ところが1974年のガッツ石松さんの世界戦は違います。
世界タイトルマッチです。
しかも大番狂わせのKO勝利。
その瞬間に、
ガッツ石松が、ガッツポーズ!
名前とポーズがあまりにも見事に一致してしまった。
これは強い(笑)。
新聞やテレビで繰り返し報道されれば、
「なるほど、ガッツ石松がやったからガッツポーズなのか」
と思うのも当然です。
そして「ガッツポーズ」という言葉自体が、一気に一般社会へ定着していったのでしょう。
「発明した人」と「広めた人」は違う
この話を整理すると、こんな感じになります。
ガッツ石松さん以前から、勝利の喜びで拳を上げる動作は存在していた。
1972年にはボウリング雑誌『週刊ガッツボウル』で「ガッツポーズ」という言葉が確認されている。
そして1974年、ガッツ石松さんが世界王者になった際の印象的なポーズによって、「ガッツポーズ」という言葉が全国的に広まった。
ですから、
「ガッツ石松がガッツポーズという言葉を作った」
というのは、どうやら正確ではありません。
しかし、
「ガッツポーズという言葉を日本中に定着させた最大の功労者」
という意味なら、ガッツ石松さんの存在は非常に大きかったと言えそうです。
それにしても「ガッツ石松」という名前がすごい
そもそも「ガッツ石松」というリングネーム自体がすごいですよね。
もともとは「鈴木石松」の名前で戦っていました。
その後、所属ジムの後援者から「もっとガッツのある選手になれ」という意味を込めて改名を勧められ、「ガッツ石松」になったと本人が語っています。
そしてそのガッツ石松さんが世界王者になり、両手を掲げた。
それが「ガッツポーズ」と呼ばれて日本中に広がった。
出来すぎた話なんです。
だからこそ、
「ガッツポーズ=ガッツ石松が元祖」
という話が定着したのでしょう。
今ではスポーツに欠かせない光景
野球。
サッカー。
ゴルフ。
テニス。
卓球。
陸上。
競馬。
今では、どんなスポーツでもガッツポーズを見かけます。
選手だけではありません。
受験に合格してガッツポーズ。
仕事が成功してガッツポーズ。
宝くじが当たってガッツポーズ。
そして競馬で万馬券が当たってガッツポーズ(笑)。
もはや日本人にとって、「やった!」という感情を表す代表的な動作になりました。
ちなみに競技によっては、相手への過度なガッツポーズがマナー上好まれなかったり、ルール上問題になったりする場合もあります。
勝って嬉しい。
でも相手への敬意も忘れない。
スポーツですから、そこも大切なんですね。
結局、ガッツポーズの由来はガッツ石松なのか?
さて、最初の疑問に戻りましょう。
「ガッツポーズの由来は、本当にガッツ石松なのか?」
答えは、
「言葉そのものはガッツ石松さん以前から存在していた。しかし全国的に広めたのはガッツ石松さん」
と考えるのが一番しっくりきます。
1972年、ボウリングの世界ですでに使われていた「ガッツポーズ」。
そして1974年4月11日。
ガッツ石松さんが世界王者となり、喜びの拳を高く掲げたことで、その言葉は日本中に知られるようになりました。
つまり、
生みの親はボウリング界かもしれない。
でも育ての親はガッツ石松。
そんなところでしょうか。
普段何気なく使っている「ガッツポーズ」という言葉にも、昭和のボウリングブームとボクシングの世界タイトルマッチが隠れていたんですね。
こういう話を知ってしまうと、スポーツ中継で選手が拳を突き上げた瞬間、
「あ、これ実はガッツ石松が元祖じゃないんだよ」
なんて誰かに言いたくなる。
まあ、それこそ雑談というものです(笑)。
ありがとう、また別の記事で。
