私は固形石鹸派!サボン・ド・マルセイユ「オリーブ石鹸」の歴史を調べてみた

雑談

今日も雑談の部屋へようこそ!

皆さん、お風呂で体を洗うときは何を使っていますか?

ボディソープ?

泡タイプ?

それとも固形石鹸?

私は断然、

固形石鹸派です。

そして使っているのが、

サボン・ド・マルセイユのオリーブ石鹸。

あの緑色っぽい、ずっしりとした石鹸です。

華やかな香りがするわけでもない。

派手な色でもない。

見た目もかなり素朴。

でも使ってみると、

「ああ、やっぱりこれでいいな」

と思わせてくれる石鹸なんです。

ただし、一つ難点がありまして……。

お風呂場に置きっぱなしにしておくと、

すぐ柔らかくなってしまう(笑)。

気がつくと角がフニャッとしている。

「ああ~、またやってしまった……」

となるんですが、それでも使い続けています。

それくらい気に入っています。

ところで、このサボン・ド・マルセイユ。

名前からして古そうですが、

いったいいつから作られているのでしょう?

調べてみると、なんとその歴史は中世までさかのぼります。

今回は私の愛用品でもある、

サボン・ド・マルセイユ、そしてマルセイユのオリーブ石鹸の歴史

について雑談してみましょう。

そもそも「サボン・ド・マルセイユ」とは?

フランス語で、

Savon de Marseille(サヴォン・ド・マルセイユ)

Savonは「石鹸」。

Marseilleはもちろんフランス南部の港町マルセイユ。

つまり、

「マルセイユ石鹸」

という意味です。

マルセイユは地中海に面したフランスを代表する港町。

そして、この「港町だった」ということが、マルセイユ石鹸の歴史では非常に重要になります。

石鹸そのものの歴史はもっと古い

もちろんマルセイユの人たちが石鹸を発明したわけではありません。

石鹸に似たものの歴史は非常に古く、古代から油脂と灰などを利用した洗浄物が使われてきました。

マルセイユ観光局の資料にも、ガリア人の時代にはブナの灰とヤギの脂肪を混ぜたペースト状のものが使われていたという記述があります。

さらに地中海世界では、植物油を使った石鹸づくりの技術が発達していきます。

有名なのが、

シリアのアレッポ石鹸。

オリーブオイルなど植物油を原料とした石鹸文化が地中海交易を通じてヨーロッパへ伝わり、イタリア、スペイン、そして南フランスへと広がっていったとされています。

マルセイユ石鹸も、こうした長い地中海の石鹸文化の延長線上にあるわけです。

なぜ「マルセイユ」が石鹸の町になったのか?

ここが面白いところです。

石鹸を作るには、

油脂。

アルカリ。

水。

塩。

などが必要です。

南フランスのプロヴァンス地方には、

オリーブがある。

カマルグ地方には、

塩がある。

そしてマルセイユには、

巨大な港がある。

材料を調達できる。

製品を輸出できる。

地中海の交易ルートにつながっている。

石鹸産業が発達する条件がそろっていたんですね。

マルセイユ周辺では14世紀末には石鹸職人の存在が記録されており、16世紀になると石鹸づくりは単なる小規模な手仕事から産業へと成長していきます。

17世紀にはマルセイユの一大産業に

17世紀になると、マルセイユ石鹸の生産量はどんどん増えていきます。

マルセイユ観光局によると、1660年には市内に7つの工場があり、年間約2万トンを生産していたとされています。

今から360年以上前ですよ。

すでに、

「マルセイユといえば石鹸」

という産業が出来上がりつつあったわけです。

そしてここで、マルセイユ石鹸史上とても重要な出来事が起こります。

1688年「コルベールの勅令」

時代はフランス絶対王政。

国王は、

ルイ14世。

「太陽王」と呼ばれた、あのルイ14世です。

1688年、マルセイユ石鹸の品質を守るための規則が定められました。

一般に、

「コルベールの勅令」

として知られています。

この規則ではマルセイユで石鹸を製造する際、粗悪な脂肪などを混ぜることを防ぎ、オリーブ油を使うことなどが定められました。

動物性脂肪の使用も禁じられます。

つまり今から300年以上も前に、

「マルセイユ石鹸を名乗るなら、ちゃんとしたものを作りなさい!」

という品質管理をやっていたわけです。

これによってマルセイユ石鹸の品質と評判はさらに高まり、フランス国内だけでなく海外へも広がっていきました。

オリーブ石鹸の「あの色」

私が使っているマルセイユのオリーブ石鹸もそうですが、伝統的なオリーブ系のものは、

緑~茶緑色

のような独特の色をしています。

いわゆる美容石鹸のような真っ白でツルツルした感じではありません。

むしろ、

「なんだか地味だな」

という感じ(笑)。

でも、そこがいい。

伝統的なマルセイユ石鹸は植物油を原料とし、香料や着色料を使わないものがあります。

UPSM(マルセイユ石鹸職人組合)が定める伝統的な基準では、使用する原材料は最大4種類。

植物油。

ソーダ。

水。

海塩。

そして、

香料なし。
着色料なし。
保存料なし。
添加物なし。

非常にシンプルです。

よく見る「72%」って何?

マルセイユ石鹸の大きなキューブを見ると、

「72%」

と刻印されていることがあります。

これ、

「オリーブオイルが72%入っています」

という意味だと思っている人もいるかもしれません。

実は少し違います。

伝統的なマルセイユ石鹸では、

最終的な石鹸に含まれる植物油由来の脂肪分が最低72%

という基準があります。

ですから、

72%=必ずオリーブオイル72%

ではありません。

マルセイユ石鹸にはオリーブ系だけでなく、ココナッツ油など別の植物油を使用するタイプもあります。

ここは意外と知られていないところですね。

昔はオリーブ油だけだったのに、なぜ変わった?

1688年の規則ではオリーブ油が基本でした。

ところが1709年、フランスを猛烈な寒波が襲います。

オリーブの木にも大きな被害が出ました。

さらにマルセイユ港には世界各地からさまざまな植物油が入ってくるようになります。

19世紀になると、

落花生油。

パーム油。

コプラ油。

なども石鹸づくりに使われるようになっていきました。

つまり「マルセイユ石鹸」は、

オリーブ石鹸から始まりながら、港町マルセイユの発展とともに原料も多様化していった

ということです。

港町だからこそ生まれた変化なんですね。

18~19世紀、マルセイユ石鹸は巨大産業へ

18世紀後半から19世紀にかけて、マルセイユの石鹸産業はさらに発展します。

産業革命。

化学工業の進歩。

港湾貿易の拡大。

そしてソーダ製造技術の進歩。

こうしたものが組み合わさり、石鹸を大量に生産できるようになります。

1829年には、

42の工場で年間約4万トン。

さらに20世紀初頭になると、生産量は10万トンを大きく超える規模に成長していきます。

マルセイユの街には巨大な釜を持った石鹸工場が並びました。

今ではちょっと想像しにくいですが、

マルセイユはまさに、

「石鹸の街」

だったのです。

巨大な釜でグツグツ煮る「マルセイユ製法」

伝統的なサボン・ド・マルセイユは、大きな釜で作られます。

UPSMが伝統製法として定めている「マルセイユ製法」では、大きく5つの工程があります。

油とソーダを反応させる鹸化(けん化)

塩を加えて石鹸分を分離する工程。

さらに加熱する煮沸・炊き上げ

洗浄。

そして仕上げ。

完成まで、

約1週間~10日。

巨大な釜を扱うのが、

メートル・サヴォニエ(石鹸職人)

です。

温度や石鹸の状態を見ながら仕上がりを判断する。

単なる工業製品というより、料理人が巨大な鍋を扱っているような世界です。

何百年も受け継がれてきた職人技なんですね。

なぜあんな巨大な四角い石鹸なの?

サボン・ド・マルセイユといえば、

600gくらいある巨大なキューブ。

初めて見ると、

「でかっ!」

と思います(笑)。

普通の日本の固形石鹸とは存在感が全然違います。

あの大きな塊も、マルセイユ石鹸らしい姿の一つです。

型に流した石鹸を乾燥させ、切り分け、刻印する。

「72%」

「MARSEILLE」

などの文字が押された無骨なキューブ。

洒落たボトルに入ったボディソープとは正反対。

でも、

使っているうちに角が丸くなっていく。

これが固形石鹸のいいところなんですよ。

新品の四角い塊が、

だんだん丸くなり、

小さくなり、

最後には薄っぺらくなる。

「使ったなあ」

という感じがあります(笑)。

ところが20世紀になると大ピンチ!

あれだけ栄えたマルセイユの石鹸産業ですが、20世紀になると状況が変わります。

特に第二次世界大戦後。

合成洗剤。

洗濯用粉末洗剤。

洗濯機。

液体洗浄剤。

大量生産の日用品。

こうしたものが一気に普及します。

わざわざ巨大な固形石鹸を削って洗濯する時代ではなくなっていったのです。

マルセイユ市によれば、1958年には石鹸工場は38社まで減少。

その後も厳しい時代が続きました。

かつて街を代表した巨大産業が、時代の変化によって消えかけてしまったんですね。

それでも消えなかった

ところがサボン・ド・マルセイユは完全には消えませんでした。

現在も伝統的な製法を守っている石鹸工場があります。

2011年には伝統的なマルセイユ石鹸を守るため、

UPSM(Union des Professionnels du Savon de Marseille)

が設立されました。

伝統製法を守る代表的な4つの製造所として、

Fer à Cheval
Marius Fabre
Savonnerie du Midi
Le Sérail

が活動しています。

何百年も前の石鹸を、今も大釜で作っている。

これはなかなかすごい話です。

実は「Savon de Marseille」という名前だけでは分からない

ここも重要です。

現在、

「Savon de Marseille」

という名称そのものが、すべての商品について伝統製法や原産地を自動的に保証してくれるわけではありません。

そのため市場には、伝統的なマルセイユ製法とは異なる製品も存在します。

そこでUPSMは、

原料。

製法。

生産地域。

という基準を設け、伝統的なサボン・ド・マルセイユを示す共同マークを運用しています。

つまり、

「マルセイユ石鹸と書いてあるから全部同じ」

ではないんですね。

これも知っておくと、石鹸を選ぶときにちょっと面白くなります。

オリーブ石鹸は、なぜ柔らかくなりやすい?

さて。

ここで私が使っていて困っている問題。

お風呂場に置いておくと柔らかくなる(笑)。

これはオリーブオイルを多く使った石鹸の性質とも関係します。

石鹸は使用後に表面へ水分が残った状態で置いておくと、水を吸ってふやけていきます。

特に浴室は、

湿度が高い。

石鹸皿に水がたまりやすい。

なかなか乾燥しない。

という、固形石鹸にとっては結構厳しい環境です。

そしてオリーブ油主体の石鹸は、配合によっては硬さや泡立ちを出しやすい油脂を多く使った石鹸より、水に触れ続けたときに柔らかさを感じやすいことがあります。

だから、

使ったらしっかり水を切る。

これが大切。

水がたまらない石鹸皿。

網状のソープディッシュ。

マグネット式で浴室の壁に付けるタイプ。

こういうものを使って、なるべく石鹸の底を濡れっぱなしにしない。

できれば風通しのいいところで乾かす。

これだけでも持ちがかなり違います。

私も分かっているんですけどね。

ついお風呂場に置きっぱなしにしてしまう(笑)。

液体ソープ全盛の時代に、なぜ固形石鹸なのか

今は便利なボディソープが山ほどあります。

ポンプを、

プシュッ。

泡立てる。

便利です。

でも私は固形石鹸が好きです。

手に取ったときの感触。

泡立てる時間。

使うたびに少しずつ形が変わっていく感じ。

そして何より、

余計なことをしていない感じ。

サボン・ド・マルセイユのオリーブ石鹸には、それがよく似合います。

何百年も前の人たちも、

オリーブ油とアルカリを大きな釜で煮て石鹸を作っていた。

基本的な原理は今も同じです。

そう考えると、お風呂で使っているあの緑色の石鹸が、

急に歴史のあるものに見えてきます。

600年以上続いた「ただの石鹸」

14世紀末にはマルセイユ周辺に石鹸職人がいた。

17世紀には一大産業になった。

1688年にはルイ14世の時代に品質基準が定められた。

18~19世紀には世界へ輸出された。

20世紀には合成洗剤などの登場で衰退した。

それでも職人たちは作り続けた。

そして21世紀の今も、

私がお風呂で使っている(笑)。

こう考えると面白いですよね。

何百年も前の製品が博物館に展示されているのではなく、

今でも普通に買えて、普通に体を洗える。

しかも基本的な石鹸づくりの考え方は昔から大きく変わっていない。

これって、かなりすごいことだと思います。

今日も私はオリーブ石鹸

というわけで、

私はこれからも固形石鹸派。

そして、

サボン・ド・マルセイユのオリーブ石鹸派です。

派手さはありません。

いい香りがいつまでも残るわけでもありません。

そしてお風呂場に放置すると、

すぐ柔らかくなります(笑)。

でも、それも含めて気に入っています。

何百年もの間、地中海の港町マルセイユで受け継がれてきた石鹸。

オリーブの産地。

カマルグの塩。

地中海交易。

ルイ14世。

巨大な石鹸工場。

大釜を操る石鹸職人。

そんな歴史を知ってから使うと、いつもの緑色の石鹸もちょっと違って見えてきます。

今夜のお風呂でも、

「この石鹸、ずいぶん昔から作ってるんだよなあ」

なんて思いながら泡立ててみます。

ただし使い終わったら、

今度こそちゃんと乾かします(笑)。

ありがとう、また別の記事で。

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