今日も雑談の部屋へようこそ!
商売をしているお店に行くと、今でもよく見かける、
招き猫。
ちょこんと座って、
片手を上げて、
「おいで、おいで」
とやっている、あの猫です。
昔ながらの食堂。
居酒屋。
お寿司屋さん。
商店。
旅館。
最近では海外のお店でも見かけるようになりました。
でも、よく見てみると……
右手を上げている猫と、左手を上げている猫がいる。
これ、何が違うのでしょう?
「右手が金運だったっけ?」
「左手がお客さん?」
「あれ?逆だったかな?」
毎回分からなくなります(笑)。
そもそも、
なぜ猫が手招きしているのか?
そして、
招き猫はどこで生まれたのか?
今回は、日本を代表する縁起物「招き猫」について調べてみましょう。
まず結論!右手は「お金」、左手は「人」
現在、一般的に言われているのは、
右手を上げた招き猫=金運・福を招く
そして、
左手を上げた招き猫=人・お客を招く
というものです。
だから商売をしているお店では、左手を上げた招き猫をよく見かけるんですね。
「お客さん、いらっしゃ~い」
というわけです。
一方、家庭などで、
「福やお金が入ってきますように」
と願うなら右手。
覚え方としては、
右手は「お金」、左手は「お客」
くらいが分かりやすいでしょう。
ただし!
ここが招き猫の面白いところ。
この左右の意味には地域や伝承によって違いがあり、
絶対に全国共通というわけではありません。
資料によっては逆の説明もあります。
愛知県図書館が複数の資料を調査した事例でも、一般的には「右=金運、左=客」としながら、異なる説や地域差があることが確認されています。
つまり、
縁起物ですから、数学の公式みたいに一つの正解があるわけではない。
そこがまた日本らしいところですね。
両手を上げた招き猫もいる!
では、
「お金も欲しいし、お客さんも来てほしい!」
となったらどうするか。
あります。
両手を上げた招き猫。
これなら、
金運も!
お客も!
両方来い!
最強じゃないですか(笑)。
……ところが昔ながらの縁起の世界では、両手上げを嫌う考え方もあります。
両手を上げる姿が、
「お手上げ」
に見えるから。
商売で「お手上げ」になったら困ります。
そのため、
「欲張って両方上げないほうがいい」
という人もいます。
一方で現在では、
「福も人も両方招く」
として普通に販売されています。
このあたりはもう、
自分が気に入った猫を選ぶのが一番
という気もしますね。
手を高く上げている猫と低い猫がいるのはなぜ?
さらに招き猫をよく見ると、
耳の横くらいまでしか手を上げていない猫。
頭よりずっと高く手を上げている猫。
いろいろいます。
これにも意味があると言われています。
一般には、
手が低い猫は近くの福を招く。
そして、
手が高い猫は遠くの福を招く。
なんて言われます。
「手長」と呼ばれる、かなり高く手を上げた招き猫もあります。
遠くのお客さんまで、
「こっちですよ~!」
と呼んでいる感じでしょうか。
現代なら、
ネット通販の全国のお客さんを呼ぶなら手長招き猫?
なんて考えると面白いですね(笑)。
そもそも、なぜ「猫」なの?
犬でもいい。
狸でもいい。
猿でもいい。
なのに、
なぜ猫なのでしょう?
猫は昔から日本人の暮らしの中で、とても重要な動物でした。
特に大切だった役割が、
ネズミ退治。
昔は米や穀物をネズミから守る必要がありました。
さらに江戸時代、日本では養蚕も盛んになります。
蚕を育てる農家にとって、ネズミは大敵。
蚕を食べてしまうからです。
そこで猫が、
ネズミを退治してくれるありがたい存在
として重宝されました。
猫がいる。
ネズミが減る。
米や蚕が守られる。
暮らしが豊かになる。
そんな実生活での役割も、猫が福をもたらす動物として見られる背景の一つになったのでしょう。
招き猫はいつ頃からいるの?
現在のような招き猫が広まったのは、
江戸時代後期から幕末ごろ
と考えられています。
江戸では庶民文化が大きく発達しました。
縁日。
見世物。
芝居。
浮世絵。
お守り。
縁起物。
庶民が「ちょっと縁起のいいもの」を楽しむ文化が花開きます。
そんな中で、
猫が手を上げて福を招く
という形の人形が作られ、商売繁盛の縁起物として広がっていったようです。
ただし、
「○年○月○日に、○○さんが最初の一体を作りました!」
という記録が残っているわけではありません。
実は招き猫、
発祥地がはっきり分からない。
そのため現在でも、
「招き猫発祥の地」
とされる場所がいくつもあります。
有名な発祥説その1「豪徳寺」
最も有名な招き猫発祥説の一つが、
東京・世田谷の豪徳寺です。
ここには面白い伝説があります。
江戸時代。
彦根藩主の井伊直孝が鷹狩りの帰りに豪徳寺の近くを通りました。
すると寺の門前に一匹の猫。
その猫が、
「こっちへおいで」
というように手招きをした。
直孝が不思議に思って寺へ入ると、
突然、
雷!
そして大雨!
猫に招かれて寺へ入ったおかげで、雷雨を避けることができた。
直孝は大変喜び、寺を支援するようになります。
豪徳寺は井伊家の菩提寺となり、発展していきました。
つまり、
猫が人を招き、その縁が寺に福をもたらした。
これが豪徳寺に伝わる招き猫のお話です。
豪徳寺の招き猫は小判を持っていない!
豪徳寺へ行ったことのある人なら分かると思いますが、
ものすごい数の白い招き猫があります。
大小さまざま。
ズラ~~~ッ!
なかなか圧巻です。
ところが豪徳寺の招き猫をよく見ると、
普通の招き猫と少し違います。
小判を持っていません。
そして、
右手を上げています。
豪徳寺ではこの猫を、
「招福猫児(まねきねこ)」
と呼んでいます。
豪徳寺の説明が、なかなかいいんです。
猫がもたらすのは、
「縁」。
猫が福そのものを持ってきてくれるのではない。
人との縁を招いてくれる。
その縁を生かして福につなげるのは、
自分自身。
だから小判を直接持っていない。
これはちょっと深いですよね。
「招き猫を置いたから明日から大金持ち!」
ではありません(笑)。
チャンスや縁を招く。その後は自分次第。
なるほど。
縁起物なのに、意外と現実的です。
発祥説その2「今戸」
招き猫の発祥地として、もう一つよく名前が挙がるのが、
東京・浅草の今戸周辺。
今戸は江戸時代から焼き物で知られた土地でした。
いわゆる、
今戸焼。
江戸の庶民向けに、食器や火鉢、人形などさまざまな焼き物が作られていました。
その今戸焼の中に、
招き猫の人形
があったことから、
「招き猫は今戸で生まれたのでは?」
という説があります。
江戸末期の記録にも、猫の人形を縁起物として売ったという話が登場します。
現在でも今戸神社は招き猫と縁の深い場所として知られています。
ただし、
豪徳寺説と今戸説のどちらが絶対に正しい
と決着しているわけではありません。
発祥説はほかにもある!
さらに招き猫の発祥説は、
豪徳寺。
今戸。
だけではありません。
東京・新宿区の自性院にも猫にまつわる伝説があります。
室町時代の武将・太田道灌が戦いで窮地に陥った際、黒猫に導かれて寺へ入り、難を逃れたという伝承です。
そのため自性院も、
「猫寺」
として知られています。
つまり招き猫には、
「ここが絶対に元祖!」
という場所が一つだけあるわけではなく、
いくつもの猫伝説が混ざりながら現在の形になっていった
と考えたほうが面白そうです。
ところで猫のあの動き、本当に「おいで」なの?
猫を飼ったことがある人なら、
「あんなふうに猫が人を手招きするか?」
と思いますよね。
もちろん人間のように、
「こちらへどうぞ」
と招いているわけではありません(笑)。
猫は顔を洗うとき、前足を顔の横へ持ち上げます。
昔から、
「猫が顔を洗うと雨が降る」
という言い伝えもあります。
そして猫が顔の横へ前足を上げる姿が、
人間には、
手招きしているように見えた。
これが招き猫のポーズにつながったとも言われています。
さらに日本の「おいで」のジェスチャーは、
手のひらを下にして、
指を曲げます。
海外の人から見ると、
「あっちへ行け」
に見えることがあるそうです。
招き猫が海外でちょっと不思議なポーズに見える理由ですね。
小判には何が書いてある?
招き猫といえば、
小判。
胸の前に大きな金色の小判を抱えています。
よく見ると、
「千万両」
「百万両」
「開運」
「福」
など、いろいろな文字が書かれています。
もちろん江戸時代に「千万両」なんて小判があったわけではありません(笑)。
あくまで、
たくさんのお金や福を招きますように
という縁起の表現です。
現在では、
商売繁盛。
開運。
金運。
良縁。
合格。
健康。
など、いろいろな願いを書いた招き猫があります。
白・黒・赤……色にも意味がある?
昔ながらの招き猫といえば、
白い三毛猫
のイメージがあります。
でも最近は、
黒。
赤。
金。
ピンク。
緑。
青。
もう招き猫売り場へ行くとカラフルです。
一般に、
白=開運・福。
黒=魔除け・厄除け。
赤=健康・病除け。
金=金運。
ピンク=恋愛・良縁。
緑=学業など。
さまざまな意味づけがされています。
ただし、これも右手・左手と同じ。
昔から全国共通で厳密に決まっていたルールではありません。
特にピンクや金色などは比較的新しい商品文化の中で意味づけが広がったものもあります。
ですから、
「この色じゃないと御利益がない!」
なんて考えなくてもよさそうです。
なぜ三毛猫が多い?
昔ながらの招き猫を見ると、
白地に黒と茶。
つまり、
三毛猫
が多いですよね。
三毛猫は日本で昔から身近な猫でした。
さらに三毛猫のオスは非常に珍しいことから、
珍しい=縁起がいい
として扱われることもありました。
船乗りの世界でも三毛猫を縁起のよい猫として船に乗せたという話があります。
そうした日本人と三毛猫との関係も、
「招き猫=三毛」
というイメージにつながったのでしょう。
招き猫は海外でも大人気
そして今や招き猫は、
日本だけの縁起物ではありません。
海外の中華料理店やアジア系のお店へ行くと、
入口に金色の招き猫が、
ウィーン、ウィーン……
と電動で手を振っている(笑)。
見たことありませんか?
海外では、
Lucky Cat
などと呼ばれています。
中国由来のものと思われることもありますが、現在一般的に知られている招き猫は日本で発達した縁起物です。
日本で生まれた猫が海外へ渡り、
今度は世界中で、
「お金よ来い!」
「お客さん来い!」
と手を振っている。
考えてみるとすごいですね。
9月29日は「招き猫の日」
ちなみに、
9月29日は「招き猫の日」
として知られています。
語呂合わせで、
9=来る。
29=福。
つまり、
「来る福」
です。
こういう語呂合わせ、日本人は本当に好きですね(笑)。
この時期には招き猫にちなんだイベントが行われる地域もあります。
招き猫好きなら覚えておいてもいい日です。
結局、右手と左手どっちを選べばいい?
さて、最初の疑問に戻りましょう。
招き猫を買うなら、
右手?
左手?
一般的な意味なら、
金運や福を願うなら右手。
商売繁盛や人との縁なら左手。
お店をやっているなら左。
家庭に置くなら右。
そんな選び方が分かりやすいでしょう。
ただ、豪徳寺では右手の猫が「人との縁」を招きます。
つまり、
右だから絶対に金、左だから絶対に人
というほど単純ではありません。
地域や寺社によって考え方が違う。
そこも含めて招き猫文化なんですね。
福を招く猫。でも本当に大事なのはその後
招き猫について調べてみると、
ただのかわいい置物ではありませんでした。
江戸の庶民文化。
猫と人との暮らし。
商売繁盛への願い。
寺院に伝わる伝説。
焼き物文化。
いろいろなものが重なって、
現在の招き猫になっています。
中でも私は、豪徳寺の考え方が気に入りました。
猫が招くのは「縁」。
福そのものを運んできてくれるわけではない。
人との縁やチャンスがやって来たとき、
それを生かすのは自分。
だから小判を持っていない。
招き猫を玄関に置いて、
「さあ、大金を持ってこい!」
と待っているだけではダメなんですね(笑)。
右手でも。
左手でも。
大切なのは、
招いてくれた縁を大事にすること。
そう考えると、招き猫が何百年も愛されてきた理由が少し分かる気がします。
さて。
あなたの家の招き猫は、
右手を上げていますか?
それとも、
左手?
今度お店で招き猫を見つけたら、ぜひ確認してみてください。
「あ、この店はお客さんを呼んでるな」
「こっちは金運だな」
なんて分かると、
今まで何気なく見ていた招き猫が、ちょっと面白く見えてきますよ。
ありがとう、また別の記事で。
