今日も雑談の部屋へようこそ!
私は焼き鳥が好きです。
焼きたての串を一本つまんで、
塩でいくか。
タレでいくか。
まずは、ねぎま。
皮。
つくね。
レバー。
ぼんじり。
せせり。
いや~、いいですね。
ところで、そんな「焼き鳥」について、以前からちょっと気になっていたことがあります。
お店の看板を見ると、
「焼き鳥」
と書いてある店もあれば、
「やきとり」
とひらがなで書いてある店もあります。
これ、
単なる表記の違いなのでしょうか?
ところが調べてみると……
鶏肉じゃない「やきとり」がある!
しかも、かなり昔から地域の食文化として定着しています。
では、
「焼き鳥」と「やきとり」は何が違うのか?
今回は日本人が大好きな串焼き、
焼き鳥と「やきとり」の世界
を雑談してみましょう。
まず「焼き鳥」とは?
普通、
「焼き鳥を食べに行こう!」
と言われたら、何を想像しますか?
おそらく、
鶏肉を串に刺して焼いたもの
ですよね。
もも。
むね。
皮。
レバー。
砂肝。
ハツ。
せせり。
ぼんじり。
そして鶏肉と長ねぎを交互に刺した、
ねぎま。
これらを炭火などで焼き、
塩やタレで味付けする。
これが一般的な「焼き鳥」です。
漢字で書けば、
焼いた鳥=焼き鳥。
非常に分かりやすい。
ところが日本の食文化というものは、そんなに単純ではありません(笑)。
「やきとり」なのに豚肉!?
代表的なのが、
北海道の室蘭やきとり。
室蘭へ行って、
「名物のやきとりを食べよう!」
と注文すると……
出てくるのは、
豚肉。
「鳥じゃないじゃん!」
となります(笑)。
しかも室蘭市自身が、
室蘭名物「室蘭やきとり」は、
鶏肉ではなく豚肉
と紹介しています。
さらに豚肉と一緒に串へ刺すのは、
長ねぎではなく、
玉ねぎ。
味付けはタレ。
そして、
洋がらしをつけて食べる。
これが室蘭やきとりの代表的なスタイルです。
豚肉。
玉ねぎ。
タレ。
洋がらし。
もう我々が想像する焼き鳥とは、かなり違います。
でも名前は、
「やきとり」。
面白いですよね。
なぜ豚なのに「やきとり」なの?
では、どうして豚肉なのに「やきとり」なのでしょう。
室蘭のやきとり文化が広がった背景には、
昭和初期の室蘭
があります。
室蘭は製鉄・鉄鋼などで発展した工業都市。
多くの労働者が働いていました。
1930年代ごろには、豚の内臓などを串に刺して焼く屋台が登場したとされます。
安くて、
栄養があり、
仕事帰りに手軽に食べられる。
そんな串焼きが工場で働く人たちに支持されていきます。
そしていつしか、
豚の串焼きなのに「やきとり」
と呼ばれるようになった。
現在では精肉の豚肉を使ったものが主流となり、
豚肉+玉ねぎ+タレ+洋がらし。
という独特のスタイルが、
室蘭のソウルフード
として定着しています。
つまり室蘭では、
「やきとり食べよう」
と言ったら、
豚肉が出てきても誰も驚かない。
むしろ、
それが普通なんですね。
「焼き鳥」と「やきとり」に全国共通の厳密なルールはない
ここで大事なところ。
では、
漢字の「焼き鳥」=鶏肉。
ひらがなの「やきとり」=豚肉なども含む。
という厳密なルールがあるのでしょうか?
答えは、
ありません。
全国共通で、
「鶏なら漢字、豚ならひらがな」
と決められているわけではありません。
鶏肉を使っていても「やきとり」と書くお店はたくさんあります。
逆に店名や商品名によっては、いろいろな表記があります。
ですから、
漢字とひらがなだけを見て肉の種類を判断することはできません。
ここは要注意です。
ただ、ご当地やきとりの世界では、鶏肉以外も含めた串焼き文化を表現するため、
あえて「やきとり」とひらがなで表記する
ケースが見られます。
室蘭市の公式情報でも、
「室蘭やきとり」
とひらがな表記されています。
実は「やきとり」はかなり懐が深い
全国の「やきとり」を見ていくと、
「焼いた鶏肉」
という一言では収まりません。
鶏肉。
豚肉。
鶏の内臓。
豚の内臓。
地域によって、
肉も違えば、
串の刺し方も違う。
味付けも違う。
一緒に刺す野菜も違う。
つまり「やきとり」は、
日本各地で独自に進化した串焼き文化
として見ると面白いんですね。
北海道にはもう一つ有名な「美唄焼き鳥」がある
北海道には室蘭だけでなく、
美唄(びばい)
にも有名な焼き鳥文化があります。
美唄市が公式に紹介している「美唄焼き鳥」の特徴は、
一串で皮やモツなど複数の部位を楽しめること。
昭和20年代半ばから、美唄市民に愛され続けているソウルフードです。
一本の串に、
いろいろな鶏の部位が刺さっている。
一般的な焼き鳥屋なら、
「これはレバー」
「これはハツ」
「これは皮」
と部位ごとに串が分かれていますよね。
ところが美唄では、
一串でいろいろ楽しむ。
これも独特です。
同じ北海道でも、
室蘭と美唄では全然違う。
室蘭は豚。
美唄は鶏のモツ。
それでも両方、
ご当地やきとり。
日本の食文化って面白いですね。
東松山では「やきとり」を頼むと豚のカシラ!?
さらに有名なのが、
埼玉県東松山市。
ここでも、
「やきとり」
と言いながら、
代表的なのは鶏肉ではありません。
使われるのは、
豚のカシラ肉。
豚の頭部周辺の肉ですね。
これを炭火で焼いて、
辛味のある味噌だれをつけて食べる。
東松山のご当地グルメとして知られています。
初めて行った人なら、
「やきとりください」
「はい、豚です」
となるわけです。
やっぱり、
鳥じゃない(笑)。
福岡の焼き鳥屋もなかなか自由
福岡の焼き鳥文化も面白い。
福岡の焼き鳥店では、
鶏肉だけではなく、
豚バラ。
牛。
野菜。
魚介。
巻物。
など、さまざまな串物が並びます。
特に、
豚バラ串
は福岡の焼き鳥文化を語るうえで外せない存在。
焼き鳥屋なのに、
豚バラが人気。
でも福岡の人にとっては、
それほど不思議なことではない。
つまり地域によっては、
「焼き鳥屋」=鶏専門店
ではなく、
「串に刺して焼いたものを楽しむ店」
という感覚に近いんですね。
そもそも昔の焼き鳥は高級料理だった?
今では焼き鳥というと、
庶民の味。
仕事帰りに、
「ちょっと一杯やってく?」
というイメージがあります。
ところが江戸時代までさかのぼると、少し事情が違います。
江戸時代には鳥肉を焼いて食べる料理がありましたが、
現在のように鶏肉を気軽に大量消費する時代ではありません。
鶏は卵を産む大切な家畜でもあります。
そのため現在の焼き鳥文化につながる串焼きが庶民に広く定着していくのは、もっと後のこと。
明治以降になると食肉文化が広がり、
大正から昭和にかけて、
屋台などで串焼きを食べる文化が発達していきます。
その中で、
安価な内臓を串に刺して焼く
という食べ方が庶民に支持されました。
鶏だけではありません。
豚のモツも焼く。
牛のモツも焼く。
いろいろ焼く。
それらを広い意味で、
「焼き鳥」「やきとり」
と呼ぶ地域も生まれていったのでしょう。
「串焼き」と「焼き鳥」はどう違う?
では、
「それ全部、串焼きでいいんじゃないの?」
と思いますよね。
たしかに現在では、
串焼き
という便利な言葉があります。
鶏。
豚。
牛。
魚介。
野菜。
何でも串に刺して焼けば、
串焼き。
非常に分かりやすい。
一方「焼き鳥」は本来、鳥肉を焼いた料理を指す言葉です。
ただし長い歴史の中で、
串に刺して焼く料理そのものを「やきとり」と呼ぶ地域文化
が生まれました。
だから、
料理として分類するなら「豚串」。
でも地元では、
「やきとり」。
この二つは矛盾しているようで、
どちらも正しい。
食べ物の名前は辞書だけで決まるのではなく、
その土地で暮らしている人たちが作っていくものなんですね。
「ねぎま」の「ま」って何?
せっかくなので焼き鳥の雑学を一つ。
焼き鳥の定番、
ねぎま。
鶏肉。
ねぎ。
鶏肉。
ねぎ。
と刺してあります。
だから、
「ねぎの間に肉があるから“ねぎま”」
と思っていませんか?
実は「ねぎま」はもともと、
ねぎ+まぐろ
だったとされます。
江戸時代には、
ねぎとマグロを使った「ねぎま鍋」などがありました。
「ま」は、
まぐろの「ま」。
その後、焼き鳥の世界で鶏肉とねぎを交互に刺した串も「ねぎま」と呼ばれるようになりました。
今では、
「ねぎまください!」
と言ってマグロが出てきたら、逆にびっくりしますよね(笑)。
言葉というのは時代とともに変わるんです。
タレか塩か――これは永遠の問題
焼き鳥の話をすると、
どうしても避けて通れない問題があります。
タレか、塩か。
これはもう、
きのこの山とたけのこの里くらい終わらない議論です(笑)。
素材の味を楽しむなら塩。
焼き鳥屋さんの継ぎ足しの味を楽しむならタレ。
皮は塩。
レバーはタレ。
いや、レバーこそ塩。
つくねは絶対タレ。
いやいや塩つくねも旨い。
……。
もう好きにしてください(笑)。
ただ地域の「やきとり」になると、この味付けにも特徴があります。
室蘭なら、
タレ+洋がらし。
東松山なら、
辛味噌。
地域によって、
「これをつけて食べるのがうちのやきとり!」
という文化がある。
これが面白いんです。
焼き鳥は「料理」、やきとりは「文化」なのかもしれない
今回いろいろ調べていて思ったのですが、
「焼き鳥」と「やきとり」の違いを、
漢字とひらがなの定義だけで考えると、なかなか答えが出ません。
そこで少し見方を変えてみます。
「焼き鳥」は料理の名前。
そして、
「やきとり」は地域に根付いた食文化まで含めた呼び方。
もちろん厳密な定義ではありません。
でも、こう考えると分かりやすい。
室蘭では、
工場で働く人たちが豚の串焼きを食べ、
「やきとり」と呼んだ。
美唄では、
鶏のさまざまな部位を一本の串で楽しむ文化が生まれた。
東松山では、
豚のカシラを焼いて辛味噌をつける。
福岡では、
鶏も豚バラも野菜も一緒に焼き鳥屋のメニューに並ぶ。
どれも、
その土地の人たちが長年食べ続けてきた「やきとり」。
材料だけ見て、
「鳥じゃないから焼き鳥じゃない!」
と言ってしまうと、
ちょっともったいない気がします。
「鳥じゃないのに、やきとり」が面白い!
というわけで、
焼き鳥と「やきとり」の違い。
結論としては、
漢字なら鶏、ひらがななら豚、という正式な決まりはありません。
一般的な「焼き鳥」は鶏肉を串に刺して焼いた料理。
でも日本各地には、
鶏以外の肉まで含めて、
「やきとり」
と呼んできた地域があります。
代表的なのが、
室蘭の豚肉。
東松山の豚カシラ。
そして美唄のモツ串など、
それぞれにまったく違った文化があります。
つまり、
「やきとり」という言葉は、私たちが思っているよりずっと懐が深い。
これから旅行先で、
「名物やきとり」
という看板を見つけたら、
ぜひ注文する前に、
「ところで、これは何の肉なんだ?」
と調べてみてください。
鳥だと思っていたら、
豚が出てくるかもしれません(笑)。
でも、それこそが、
その土地で育った「やきとり」の味。
そして最後に一つだけ。
焼き鳥でも、
やきとりでも、
豚でも、
鶏でも、
炭火でジュージュー焼いている匂いを嗅いだら……
もう食べたくなる。
これだけは全国共通ですね(笑)。
ありがとう、また別の記事で。
